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黑川启太
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【个人翻译】木乃伊 - 中島敦

全文字数:8345

木乃伊

中島敦 (中岛敦)

原文

【日】 大キュロスとカッサンダネとの息子、波斯王カンビュセスが埃及に侵入した時のこと、その麾下の部将にパリスカスなる者があった。父祖は、ずっと東方のバクトリヤ辺から来たものらしく、いつまでたっても都の風になじまぬすこぶる陰鬱な田舎者である。どこか夢想的な所があり、そのため、相当な位置にいたにもかかわらず、いつも人々の嘲笑を買っていた。

【中】 这是发生在居鲁士大帝与卡桑达妮之子、波斯王冈比西斯入侵埃及时的故事。在其麾下有一位名叫帕里斯卡斯的部将。他的祖辈似乎来自遥远的东方巴克特里亚一带,他是个怎么也无法融入都城风气的、极其阴郁的乡巴佬。由于他身上总带着某种梦幻般的气质,因此尽管身居高位,却总是遭到人们的嘲笑。

【日】 波斯軍がアラビヤを過ぎ、いよいよ埃及の地に入った頃から、このパリスカスの様子の異常さが朋輩や部下の注意を惹きはじめた。パリスカスは見慣れぬ周囲の風物を特別不思議そうな眼つきで眺めては、何か落着かぬ不安げな表情で考え込んでいる。何か思出そうとしながら、どうしても思出せないらしく、いらいらしている様子がはっきり見える。埃及軍の捕虜共が陣中に引張られて来た時、その中のある者の話している言葉が彼の耳に入った。しばらく妙な顔をして、それに聞入っていた後、彼は、何だか彼等の言葉の意味が分かるような気がする、と、傍の者に言った。自分でその言葉を話すことは出来ないが、彼等の話す言葉だけは、どうやら理解できるようだ、というのである。パリスカスは部下をやって、その捕虜が埃及人か、どうか(というのは、埃及軍の大部分は希臘人その他の傭兵だったから)を尋ねさせた。たしかに埃及人だという返辞である。彼はまた不安な表情をして考えに沈んだ。彼は今までに一度も埃及に足を踏入れたこともなく、埃及人と交際をもったこともなかったのである。激しい戦の最中にあっても、彼は、なお、ぼんやりと考えこんでいた。

【中】 自从波斯军队穿过阿拉伯、终于踏入埃及的土地时起,帕里斯卡斯异常的举动就开始引起了同僚和部下的注意。帕里斯卡斯用一种极其不可思议的目光,眺望着周围陌生的风物,并带着某种焦躁不安的神情陷入沉思。可以明显看出,他似乎拼命想要想起什么,却怎么也想不起来,显得十分急躁。当埃及军的俘虏被押解到阵中时,其中某些人的交谈声传入了他的耳中。他面露奇妙的神色,倾听了一会儿后,对身旁的人说,他总觉得能明白那些人话里的意思。他说,虽然自己不会说那种语言,但他们所说的话,自己似乎能听得懂。帕里斯卡斯派部下去询问那个俘虏是否是埃及人(因为埃及军队的很大一部分是由希腊人及其他雇佣兵组成的)。得到的回答是,那确实是埃及人。他又露出不安的表情,陷入了沉思。在此之前,他从未踏入过埃及一步,也从未与埃及人有过任何交往。即便是在激烈的战斗中,他依然常常茫然地陷入沉思。

【日】 敗れた埃及軍を追うて、古の白壁の都メムフィスに入城した時、パリスカスの沈鬱な興奮は更に著しくなった。癲癇病者の発作直前の様子を思わせることもしばしばである。以前は嗤っていた朋輩達も少々気味が悪くなって来た。メムフィスの市はずれに建っている方尖塔(オベリスク)の前で、彼はその表に彫られた絵画風な文字を低い声で読んだ。そして、同僚達に、その碑を建てた王の名と、その功業とを、やはり、低い声で説明した。同僚の諸将は、皆、へんな気持になって顔を見合せた。パリスカス自身もすこぶるへんな顔をしていた。誰も(パリスカス自身も)、今までパリスカスが埃及の歴史に通じているとも、埃及文字が読めるとも、聞いたことがなかったのである。

【中】 追击战败的埃及军队,进入古老的白壁之都孟菲斯时,帕里斯卡斯那种阴郁的兴奋感变得更加明显了。他常常表现出宛如癫痫病发作前兆般的模样。以前嘲笑过他的同僚们,现在也觉得有些毛骨悚然了。在立于孟菲斯城郊的方尖碑前,他用低沉的声音读出了表面雕刻的图画般的文字。接着,他又低声向同僚们说明了建造这座石碑的国王的名字以及他的丰功伟绩。同僚将领们都感到一种莫名的诡异,面面相觑。帕里斯卡斯自己也露出了极其古怪的表情。因为从来没有任何人(包括帕里斯卡斯自己)听说过帕里斯卡斯精通埃及历史,或者能读懂埃及文字。

【日】 その頃から、パリスカスの主人、カンビュセス王も次第に狂暴な瘋癲の気に犯され始めたようである。彼は埃及王プサメニトスに牛の血を飲ませて、これを殺した。それだけでは慊らず、今度は、半年前に崩じた先王アメシスの屍を辱めようと考えた。カンビュセスが含む所のあったのは、むしろアメシス王の方だったからである。彼は自ら一軍を率いて、アメシス王の廟所のあるサイスの市に向った。サイスに着くと、彼は、故アメシス王の墓所を探出し、その屍を掘出して、己の前に持って来るよう、一同に命令した。

【中】 大约从那时起,帕里斯卡斯的主君冈比西斯王,似乎也开始逐渐被狂暴的癫狂之气所侵扰。他强迫埃及王普萨美提克喝下牛血将其杀害。但这还不足以让他满足,这次,他打算去侮辱半年前驾崩的先王阿玛西斯的尸体。因为冈比西斯真正怀恨在心的,其实是阿玛西斯王。他亲自率领一支军队,前往阿玛西斯王陵庙所在的塞易斯城。抵达塞易斯后,他命令众人找出故王阿玛西斯的陵墓,将其尸骸挖出并带到他面前。

【日】 かねてかかる事のあるべきを期していたものとみえ、アメシス王の墓所の所在は巧みに晦まされていた。波斯軍の将士はサイス市内外の多数の墓地を一つ一つ発いて検めて歩かねばならなかった。

【中】 似乎早已预料到会有这种事发生,阿玛西斯王陵墓的所在被巧妙地隐藏了起来。波斯军的将士们不得不将塞易斯城内外的众多墓地逐一挖开来进行排查。

【日】 さて、パリスカスも、この墓所捜索隊の中に加わっていた。他の連中は、埃及貴族の木乃伊と共に墓に納められた無数の宝石、装身具、調度類の掠奪に夢中になっていたが、パリスカスだけは、そんなものには目もくれず、相変らず沈鬱な面持で、墓から墓へと歩き廻っていた。時々その暗い表情のどこかに、曇天の薄れ陽のような明るみが射しかけることもあるが、それはすぐに消えて、また、元の落着きのない暗さに戻ってしまう。心の中に、何か、ある、解けそうで解けないものが引掛っているような風である。

【中】 此时,帕里斯卡斯也加入了这支陵墓搜查队中。其他人都沉迷于掠夺与埃及贵族木乃伊一同陪葬的无数宝石、首饰和器具,唯独帕里斯卡斯对这些东西看都不看一眼,依旧带着阴郁的神情,在墓穴之间徘徊。有时,在他那阴暗表情的某个角落,也会射入一缕宛如阴天里微弱阳光般的亮色,但那光亮转瞬即逝,很快又恢复了原来那种焦躁不安的阴暗。他心里仿佛被某种呼之欲出却又无法解开的东西紧紧纠缠着。

【日】 捜索を始めてから何日目かのある午後、パリスカスは、たった一人で、ある非常に古そうな地下の墓室の中に立っていた。いつ、同僚や部下と、はぐれてしまったものか、この墓は市のどの方角に当るものか、それらは、まるで判らない。とにかく、いつもの夢想から醒めて、ひょいと気が付いてみたら、たった一人で古い墓室の薄暗がりの中にいた、というより外はない。

【中】 搜查开始后某天的下午,帕里斯卡斯独自一人站在了一间看似非常古老的地下墓室里。是什么时候和同僚、部下走散的,这座陵墓位于城市的哪个方位,他完全不知道。总之,他从一如既往的梦幻中猛然惊醒,回过神来时,只能说自己已经独自一人置身于古老墓室的昏暗之中了。

【日】 眼が暗さに慣れるにつれ、中に散乱した彫像、器具の類や、周囲の浮彫、壁画などが、ぼうっと眼前に浮上って来た。棺は蓋を取られたまま投出され、埴輪人形(ウシャブチ)の首が二つ三つ、傍にころがっている。既に他の波斯兵の掠奪にあった後であることは、一見して明らかである。古い埃のにおいが冷たく鼻を襲う。闇の奥から、大きな鷹頭神の立像が、硬い表情でこちらを覗いている。近くの壁画を見れば、豺や鰐や青鷺などの奇怪な動物の頭をつけた神々の憂鬱な行列である。顔も胴もない巨きな眼(ウチャト)が一つ、細長い足と手とを生やして、その行列に加わっている。

【中】 随着眼睛逐渐适应黑暗,散落在墓室中的雕像、器具,以及四周的浮雕、壁画等,在他眼前隐隐约约地浮现出来。棺材被掀开了盖子扔在一旁,几个陪葬泥俑(乌沙布提)的头颅滚落在旁边。一眼就能看出,这里显然已经遭受过其他波斯士兵的掠夺。古老灰尘的阴冷气息扑鼻而来。从黑暗的深处,一尊巨大的鹰头神立像正带着僵硬的表情向这边窥视。看看近处的壁画,是一列顶着胡狼、鳄鱼、苍鹭等奇怪动物头颅的神灵们组成的忧郁行列。一只既没有脸也没有躯干的巨大独眼(乌加特),长出了细长的手脚,也加入了这支队列之中。

【日】 パリスカスはほとんど無意識に足を運ばせて奥へ進んだ。五六歩行くと、彼は躓いた。見ると、足許に木乃伊がころがっている。彼は、またほとんど何の考えもなしにその木乃伊を抱起して、神像の台に立掛けた。数日来見飽きるほど見て来た平凡な木乃伊である。彼は、そのまま、行過ぎようとして、ふとその木乃伊の顔を見た。途端に、冷熱いずれともつかぬものが、彼の脊筋を走った。木乃伊の顔に注いだ視線を、もはや外すことが出来なくなった。彼は、磁石に吸寄せられたように、凝乎と身動きもせず、その顔に見入った。

【中】 帕里斯卡斯几乎是下意识地迈开脚步向深处走去。走了五六步,他绊了一下。低头一看,脚边滚落着一具木乃伊。他又几乎是不假思索地将那具木乃伊抱起,靠立在神像的台座上。这是他连日来早就看腻了的、一具再普通不过的木乃伊。他本打算就这么走过去,却不经意间瞥了一眼那具木乃伊的脸。刹那间,一股分不清是冰冷还是炽热的感觉顺着他的脊背窜了上来。他投向木乃伊脸庞的视线,再也无法移开了。他像被磁石吸住了一般,一动不动地凝视着那张脸。

【日】 どれほどの長い間、彼はそこに、そうしていたろう。

【中】 他在那里,那样站了究竟有多久呢。

【日】 その間に、彼の中に非常な変化が起ったような気がした。彼の身体を作上げている、あらゆる元素どもが、彼の皮膚の下で、物凄く(ちょうど、後世の化学者が、試験管の中で試みる実験のように)泡立ち、煮えかえり、その沸騰がしばらくして静まった後は、すっかり以前の性質と変ってしまったように思われた。

【中】 在这期间,他感觉自己的体内发生了极其巨大的变化。构成他身体的所有元素,在他的皮肤之下,剧烈地(就像后世的化学家在试管中进行的实验一样)冒泡、沸腾,而当这阵沸腾过了一会儿平息下来之后,他觉得那些元素的性质已经和以前完全不同了。

【日】 彼は大変やすらかな気持になった。気がつくと、埃及入国以来、気になって仕方のなかったこと――朝になって思出そうとする昨夜の夢のように、解かりそうでいて、どうしても思出せなかったことが、今は実に、はっきり判るのである。なんだ。こんな事だったのか。彼は思わず声に出して言った。「俺は、もと、この木乃伊だったんだよ。たしかに。」

【中】 他感到了一种极大的安宁。回过神来时,自进入埃及以来让他一直牵肠挂肚的事情——就像早晨醒来试图回想昨夜的梦一样,似乎呼之欲出却怎么也想不起来的事情,现在他终于真真切切地明白了。原来如此,竟是这么回事啊。他不禁脱口而出:“我,原本就是这具木乃伊啊。确实如此。”

【日】 パリスカスがこの言葉を口にした時、木乃伊が、心持、脣の隅をゆがめたように思われた。どこから光が落ちて来るのか、木乃伊の顔の所だけ仄明るく浮上っていて、はっきり見えるのである。

【中】 当帕里斯卡斯说出这句话时,他觉得那具木乃伊似乎微微撇了一下嘴角。不知光线是从哪里落下来的,唯独木乃伊脸部的地方微微发亮,浮现在暗处,让人看得很清楚。

【日】 今や、闇を劈く電光の一閃の中に、遠い過去の世の記憶が、一どきに蘇って来た。彼の魂がかつて、この木乃伊に宿っていた時の様々な記憶が。砂地の灼けつくような陽の直射や、木蔭の微風のそよぎや、氾濫のあとの泥のにおいや、繁華な大通りを行交う白衣の人々の姿や、沐浴のあとの香油の匂いや、薄暗い神殿の奥に跪いた時の冷やかな石の感触や、そうした生々しい感覚の記憶の群が忘却の淵から一時に蘇って、殺到して来た。

【中】 此刻,在划破黑暗的一道闪电之中,久远的前世记忆,在这一瞬间全都苏醒了。那是他的灵魂曾经栖息于这具木乃伊中时的种种记忆。沙地灼热的阳光直射,树荫下微风的吹拂,泛滥后泥土的气息,熙熙攘攘的大街上穿梭往来的白衣人群的身影,沐浴后香油的芬芳,以及跪在昏暗神殿深处时那冰冷的石头触感——这一群鲜活的感觉记忆从遗忘的深渊中瞬间复苏,汹涌而至。

【日】 その頃、彼はプターの神殿の祭司ででもあったのだろうか。だろうか、と云うのは、彼のかつて見、触れ、経験した事物が今彼の眼前に蘇って来るだけで、その頃の彼自身の姿は一向に浮かんでこないからである。

【中】 那个时候,他莫非是普塔神殿里的祭司吗?之所以说是“莫非”,是因为他曾经看过、摸过、经历过的事物现在仅仅是在他眼前复苏,而那个时候他自己的模样却怎么也浮现不出来。

【日】 ふと、自分が神前に捧げた犠牲の牡牛の、もの悲しい眼が、浮かんで来た。誰か、自分のよく知っている人間の眼に似ているなと思う。そうだ。確かに、あの女だ。たちまち、一人の女の眼が、孔雀石の粉を薄くつけた顔が、ほっそりした身体つきが、彼に馴染みのしぐさと共に懐かしい体臭まで伴って眼前に現れて来た。ああ懐かしい、と思う。それにしても夕暮れの湖の紅鶴のような、何と寂しい女だろう。それは疑いもなく、彼の妻だった女である。

【中】 恍惚间,他奉献在神前作为祭品的公牛那双悲伤的眼睛浮现在了脑海里。他想,这双眼睛真像某个自己熟识的人啊。对了。确实,是那个女人。刹那间,一个女人的眼睛、薄薄涂着孔雀石粉末的脸庞、纤细的身姿,伴随着他所熟悉的举止乃至令人怀念的体香,一同出现在了他的眼前。啊,真让人怀念啊,他想。不过,她就像是黄昏湖畔的红鹤一样,是一个多么落寞的女人啊。毫无疑问,那是他曾经的妻子。

【日】 不思議なことに、名前は、何一つ、人の名も所の名も物の名も、全然憶出せない。名の無い形と色と匂と動作とが、距離や時間の観念の奇妙に倒錯した異常な静けさの中で、彼の前にたちまち現れ、たちまち消えて行く。

【中】 不可思议的是,名字——无论什么名字,人名、地名还是物名,他一个也想不起来。没有名字的形状、色彩、气味和动作,在距离和时间观念奇妙颠倒的异常寂静中,在他面前倏忽出现,又倏忽消失。

【日】 彼はもはや木乃伊を見ない。魂が彼の身体を抜出して、木乃伊に入ってしまったのであろうか。

【中】 他已经不再看木乃伊了。莫非灵魂已经离开了他的身体,进入了那具木乃伊之中吗?

【日】 また、一つの情景が現れる。自分は酷い熱で床の上に寐ているらしい。傍には妻の心配そうな顔が覗いている。その後には、まだ誰やら老人らしいのや子供らしいのがいる様子である。ひどく咽喉が渇く。手を動かすと、すぐに妻が来て、水を飲ませてくれる。それからしばらく、うとうとする。眼が覚めた時は、もうすっかり熱がひいている。うす眼をあけて見ると、傍で妻が泣いている。後で老人達も泣いているようだ。急に、雨雲の陰が湖の上をみるみる暗く染めて行くように、蒼い大きな翳が自分の上にかぶさって来る。目の眩むような下降感に思わず眼を閉じる。――――

【中】 接着,又一个情景浮现出来。自己似乎发着高烧躺在床上。身旁妻子正带着担忧的神情探头看着他。在她的身后,似乎还有些像老人和孩子模样的人。喉咙渴得厉害。他刚一抬手,妻子便立刻过来喂他喝水。然后他迷迷糊糊睡了一会儿。醒来时,烧已经完全退了。他微微睁开眼,看见妻子在旁边哭泣。后边的老人们似乎也在哭。突然,就像雨云的阴影转瞬间将湖面染暗一般,一团巨大的苍色阴翳向自己当头罩下。一阵令人头晕目眩的坠落感让他不由自主地闭上了眼睛。——

【日】 そこで彼の過去の世の記憶はぷっつり切れている。さて、それから幾百年間の意識の闇が続いたものか、再び気が付いた時は、(すなわち、それは今のことだが)一人の波斯の軍人として、(波斯人としての生活を数十年送った後)己のかつての身体の木乃伊の前に立っていたのである。

【中】 到这里,他前世的记忆便猛然中断了。接着,不知持续了几百年的意识黑暗之后,当他再次恢复知觉时,(也就是现在)他已经作为一名波斯军人,(在度过了数十年作为波斯人的生活之后)站在了自己曾经身体的木乃伊面前。

【日】 奇怪な神秘の顕現に慄然としながら、今、彼の魂は、北国の冬の湖の氷のように極度に澄明に、極度に張りつめている。それはなおも、埋没した前世の記憶の底を凝視し続ける。そこには、深海の闇に自ら光を放つ盲魚共のように、彼の過去の世の経験の数々が音もなく眠っているのである。

【中】 面对这诡异神秘的显现,他感到不寒而栗,而此刻,他的灵魂却像北国冬日湖面上的冰一样,极其澄澈,又极其紧绷。它依然在继续凝视着那被埋没的前世记忆的最深处。在那里,他前世的种种经历,就像深海黑暗中自体发光的盲鱼一般,无声无息地沉睡着。

【日】 その時、闇の底から、彼の魂の眼は、一つの奇怪な前世の己の姿を見付け出した。

【中】 就在这时,从黑暗的深处,他灵魂的眼睛发现了一个诡异的前世自己的身影。

【日】 前世の自分が、ある薄暗い小室の中で、一つの木乃伊と向い合って立っている。おののきつつ、前世の自分は、その木乃伊が前々世の己の身体であることを確認せねばならない。今と同じような薄暗さ、うすら冷たさ、埃っぽいにおいの中で、前世の己は、忽然と、前々世の己の生活を思出す……

【中】 前世的自己,在一间昏暗的墓室中,正与一具木乃伊面对面站立着。战栗之中,前世的自己必须确认那具木乃伊正是前前世自己的身体。在与现在相同的昏暗、微冷和充满灰尘气息的空气中,前世的自己,忽然回想起了前前世自己的生活……

【日】 彼はぞっとした。一体どうしたことだ。この恐ろしい一致は。怯れずになお仔細に観るならば、前世に喚起した、その前々世の記憶の中に、恐らくは、前々々世の己の同じ姿を見るのではなかろうか。合せ鏡のように、無限に内に畳まれて行く不気味な記憶の連続が、無限に――目くるめくばかり無限に続いているのではないか?

【中】 他毛骨悚然。这到底是怎么回事。这可怕的巧合。如果不去害怕而继续仔细看下去的话,在前世所唤起的那前前世的记忆之中,恐怕就会看到前前前世的自己一模一样的身影吧。就像两面相对的镜子一般,无限向内折叠的令人毛骨悚然的记忆连锁,难道不是在无限地——令人目眩般无限地延续着吗?

【日】 パリスカスは、全身の膚に粟を生じて、逃出そうとする。しかし、彼の足は、すくんでしまう。彼は、まだ木乃伊の顔から眼を離すことが出来ない。凍ったような姿勢で、琥珀色の干涸びた身体に向いあって立っている。

【中】 帕里斯卡斯全身起满了鸡皮疙瘩,想要逃跑。然而,他的双脚却僵住了。他依然无法将视线从木乃伊的脸上移开。他以冻结般的姿势,与那具琥珀色的干瘪躯体面对面地伫立着。

【日】 翌日、他の部隊の波斯兵がパリスカスを発見した時、彼は固く木乃伊を抱いたまま、古墳の地下室に倒れていた。介抱されてようやく息をふき返しはしたが、もはや、明らかな狂気の徴候を見せて、あらぬ譫言をしゃべり出した。その言葉も、波斯語ではなくて、みんな埃及語だったということである。

【中】 第二天,当其他部队的波斯士兵发现帕里斯卡斯时,他正紧紧抱着那具木乃伊,倒在古墓的地下室里。经过看护,他总算苏醒了过来,但却显露出了明显的疯狂症状,开始说起了胡话。而据说他所说的那些话,也根本不是波斯语,全都是埃及语。

【日】 (昭和十七年七月)

【中】 (昭和十七年七月)



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